駐日各国大使館員の文楽鑑賞

 

東京スタディツアー

文楽鑑賞

 

平成22年12月11日(土)、駐日各国大使館員とそのご家族(8カ国、20名)が国立劇場で文楽を鑑賞するツアーに参加しました。公演に先立ち、特定非営利活動法人人形浄瑠璃文楽座と国立劇場並びに三味線弾きの野澤(のざわ)喜一朗(きいちろう)さんにご協力いただき、文楽の魅力と文楽三味線についてレクチャーしていただきました。

 

人形(にんぎょう)浄瑠璃(じょうるり)文楽(ぶんらく)は、2003年に『世界無形遺産』に登録された日本を代表する伝統的な人形劇です。物語を語る太夫(たゆう)、またそれに合わせて演奏する三味線弾き、そして一体の人形を三人がかりで操る人形遣いの三位一体の息を合わせた共同作業によって成り立っています。そして、これらはすべて男性だけで演じられます。中でも三味線は、重要な役割を果たし、太夫が語る義太夫(ぎだゆう)(ぶし)を助けるばかりでなく、音色一つで情景描写や登場人物の喜怒哀楽の心情はもとより性別や年齢までも見事に表現し分けます。用いられる三味線は、豪快な響きと低い音が特徴の太棹(ふとざお)ですが、繊細で柔らかい音色もこの太棹を使って奏でます。そこで野澤さんが、町娘とお姫様の登場するときの音色の違いを実際に弾き分けてくださいました。小走りしている町娘を軽やかな音色で表現するのに対し、お姫様が登場する場面では、まるで着物の長い裾を引きずって優雅に歩いているかのようなゆったりした音色で豊かに表現しました。野澤さんは、文楽を鑑賞する際に、そういった三味線の音色の違いにも耳を澄ませると、より一層楽しむことができると教えてくださいました。そして、「せっかくですから、三味線に触れてみましょう」と、自分の三味線を有志の参加者に差し出し、簡単な手ほどきをした後に自らも演奏に加わり、三味線セッションを楽しんでレクチャーは終了しました。

 

レクチャーの後は、いよいよ文楽を鑑賞。今回の演目は、不幸な境遇にいたわり合う姉弟の情愛が美しく描かれた『安寿(あんじゅ) つし王 由良(ゆらの)(みなと)千軒(せんげん)長者(ちょうじゃ)』の山の段と中国の「二十四孝(にじゅうしこう)」の故事を取り入れた『本朝廿四(ほんちょうにじゅうし)(こう)』の桔梗(ききょう)(がはら)の段、景勝(かげかつ)下駄(げた)の段、(かん)助住家(すけすみか)の段です。これらは「時代物」と呼ばれ、江戸時代よりも前の公家や武家社会に起こった事件や物語を題材にしています。参加者たちは、国立劇場で借りた英語イヤホンで本編の詳しい解説を聞きながらこれらの演目を堪能しました。

 

参加者たちにとってこのツアーが文楽の魅力を体験する良い機会になれたことを願いつつ、IHCSAでは今後もこのような日本文化を紹介する企画を提供してまいります。