在京外国人による「東伊豆町観光コンテンツ検証事業」
在京外国人による「東伊豆町観光コンテンツ検証事業」
当協会は平成29年12月2日~3日の週末に、東京に在住する外国人を静岡県東伊豆町へお連れして、当地の観光資源を視察、検証する事業を実施しました。これは東伊豆町商工会が今年度取り組んでいる「小規模事業者地域力活用新事業全国展開支援事業」の一環として、インバウンド着地型観光を通じた地域振興を目的として実施されたものです。
台湾からの留学生2名、日本企業勤務の中国人2名、米国大使館員・プロカメラマンの計6名が参加しました。
熱川温泉で現地の関係者と合流して、関係者と自己紹介を交わした後、まずは駅に隣接する無料の足湯施設『湯の華ぱぁーく』の足湯で、電車でこわばった足をほぐしました。足湯に浸かる間、源泉から湧く温泉を使って卵をゆで、温泉玉子にして頂きました。温泉成分が染み込んでほんのり塩味がする温泉玉子は半熟状態でしたが、普段生卵を食しない中国人参加者もおいしく食べることができました。
湯の華ぱぁーく | 卵を網に入れてぶら下げる | 日本仮面歴史館 |
至る所から立ち上る湯気を見ながら、歩いて3-4分で『日本仮面歴史館』へ。850に及ぶ多種多彩で表情豊かな日本の伝統的な仮面の展示を、制作した館長の佐藤氏自ら案内していただきました。大きなものでは2メートル以上もある仮面が所狭しと陳列されていて、暖簾で仕切られた展示室に進み入るたびに目に飛び込んでくる迫力と神秘さに、参加者は「あっ!」と思わず驚嘆の声を漏らしていました。
昼食は、熱川で人気の高い『伊豆の味処 錦』で海鮮料理を頂きました。名物メニュー「鯵のたたき丼」が参加者に好評で、食材が新鮮なので、生の魚に抵抗があった台湾の留学生もおいしく食べられ、生魚を食べられたことを喜んでいました。
伊豆の味処 錦 | お湯かけ弁財天 | 熱川バナナワニ園 |
食後は、隣接する『お湯かけ弁財天』で、源泉から勢いよく噴き出る熱湯を間近に見ながら、その由来とお金にお湯をかけることの説明を受けました。1人1人財布から小銭を取り出して清めたり、願い事を各国語で書いた絵馬を掛けたりして、日本人観光客が実際に行っているのと同じように体験しました。
午後は、東伊豆町を代表する観光施設『熱川バナナワニ園』で、学芸員に英語を交えて説明いただきながらワニやレッサーパンダ、ゾウガメなどの動物、バナナや睡蓮、蘭などの熱帯植物を見学しました。ワニをガラス越しに真下から見られる仕掛けに米国人の夫人から“This is Cool!”(素敵!)との声が上がったり、植物園の美しい花々や珍しい植物にみなさんは引っ切り無しにシャッターを切っていました。
多くの旅行者が伊豆半島で楽しんでいる食べ放題のみかん狩りを収穫体験果樹園『ふたつぼり』で行いました。太平洋を一望できる農園では、ちょうど早生みかんがおいしい時期に当たり、オーナーの田村氏から“今は小さ目の方が甘い”などのアドバイスを受けながら、思い思いに選んで、ハサミで摘んだその場でたくさん食べました。最後に大きいみかんを2個ずつ摘み、手絞り器で絞って、鮮度も濃度も満点のジュースを味わい、みかん三昧のひと時を過ごしました。海外ではこのような観光果樹園はあまりなく、加えて、ジュースにして飲めたことに特別感があったようです。
ふたつぼり | 細野高原 | SAZANAにて夕食 |
夕方にかけて訪れたのは、ススキが揺れる広大な『細野高原』。天気に恵まれ、青空の下で雄大な大島や昇りつつある満月を望みながら、さらに、頭上を色鮮やかなパラグライダーが次々に飛び過ぎていく光景も相まって、まさしく360度の大パノラマにテンションが上がっている様子でした。この高原は、参加者が2日間を振り返るとき1番強い印象が残ったところだったようで、知り合いにお勧めしたい観光地として多くの参加者が挙げていました。
宿泊は、アジアンテイストの客室に特色がある稲取温泉『心湯の宿~SAZANA~』。好みの柄の浴衣を選んで着て、本館への移動には下駄に履き替えてもらい、翌朝の本館の大浴場では大海原を昇る太陽を浴びながら温泉を楽しむなど、日本情緒を満喫してもらいました。夕食、朝食とも繊細に手が加えられた見栄えの良い料理が並び、外国人には珍しいその美しさとおいしさが喜ばれました。
2日目は、若い台湾人2名は、海岸にそびえ立つ高さ20メートルの巨大な奇岩『はさみ石』を視察しました。ここに至る山道は険しく、危険な箇所が多いのですが、商工会スタッフの誘導で乗り切り、石にまつわる伝承を踏まえながら実物を目の前に仰ぎ見て、東伊豆でしかできないひと時を体験できました。
はさみ石 | 済広寺 占い摩尼車 | 港の朝市 |
そのほか4名は、樹齢750年の榧の大樹を有することから「かやの寺」と称される『済広寺』を訪れました。住職から寺全体の説明を受け、まず真っ暗な空間「不動消災の道」を手探りで進み心身ともに研ぎ澄まされた後、摩尼車を回して出た運気に応じて1人1人に、功徳が得られ、苦厄が取り除かれるありがたいお話しを外国人にも分かりやすく住職から頂きました。大きな曼陀羅図などが展示されている「宝物館」、見事な大きさの錦鯉が泳ぐ池、建物・庭のたたずまいなどにとても日本的なものを感じられたようでした。
地元の新鮮な魚介類や野菜、特産物が並ぶ『港の朝市』では各自で出店を巡りました。あちらこちらで差し出されるいろいろな試食品を気軽に試したり、無料で振る舞われる金目鯛のあら汁を味わったりしながら、外国人でも地元の人々との触れ合いを楽しむことができました。
子どもの幸せを願って作られる「雛のつるし飾り」は、発祥の地である稲取で江戸時代から引き継がれてきました。『雛の館』では、天井から吊るされている高さ数メートルにもなるつるし飾りに圧倒されたり、さまざま種類の手の込んだ細工に感心するなど、艶やかな赤色も相まってみなさんの目が輝いていました。
そのつるし飾りを参加者自ら制作するために、制作工房『絹の会』に協力いただき、各自で布地を選んで、初心者でも比較的作りやすい「桃」に挑戦しました。普段針仕事に慣れていない方にとっては難しい工程もありましたが、最後にひもを絞って完成させると喜びがひとしおでした。最初から最後まで温かく手ほどきを受けられたこともあり、地元の人と直接に交流できたことが大変喜ばれました。
雛の館 | 絹の会 | グループインタビュー |
昼食は、『徳造丸 魚庵』で稲取名物金目鯛の煮付がメイン料理の定食を頂きました。金目鯛とベストマッチという評判の高い煮付汁とともに賞味した参加者は、みなさんが舌鼓を打ち、その他の新鮮な魚介類も併せて地元の名産物を満喫しました。
行程の最後は、商工会会議室において、地元で観光産業に従事する方々との「グループインタビュー」を2時間にわたり行いました。訪問先の率直な印象や、今後のインバウンド対応力向上のための方法などが参加者から提起され、意見交換を行いました。初日冒頭に“自分の目で見ることと併せて、母国からの旅行者の広い視点で見ること”を参加者に強調してから視察したこともあり、多様な外国人目線からの意見が活発にあげられました。
2日間を通して、地元の方々との双方向性がある(interactive)ことが多かったこと、風景も食事もそのほかにも写真映えがするものがたくさんあること、都会にはないものがここにはあることなどが大変喜ばれ、東伊豆ならではコンテンツを満喫できたことに高い評価を頂きました。当協会から依頼するまでもなく早々と、素晴らしい体験ができた東伊豆町の魅力をWeChatなどのSNSで発信したり、YouTubeに投稿した参加者もいました。