駐日大使館員の「湯田中温泉および近隣地域」モニターツアーを開催

当協会は平成29年8月26日(土)~27日(日)の週末に、欧米4カ国の大使館員・家族を招待し、長野県山ノ内町の湯田中温泉および近隣地域を訪ねるモニターツアーを開催しました。これは観光庁「地域資源を活用した観光地魅力創造事業」の一環として、観光まちづくり会社である(株)WAKUWAKUやまのうちなどと連携して、当協会がツアーの企画立案、参加者募集・運営を担当して開催したものです。 ツアーにはアメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリアの4カ国から10組20名の大使館員および家族が参加しました。

 

 初日は東京駅から北陸新幹線と長野電鉄の特急列車を乗り継いで、昼前に終着駅である湯田中駅に到着しました。一行は到着後すぐに、WAKUWAKUやまのうちが手掛けるレストラン『HAKKO』で、ハーブ鳥の塩こうじグリルや発酵調味料を使ったオニオンスープなどのランチを試食。長野県の食の特徴である発酵食品を中心としたメニューに、舌の肥えている大使館員も「美味しい!」を連発していました。

 

 午後は、山ノ内町を中心に視察。
 まずWAKUWAKUやまのうちが関わり2016年にオープンした宿泊施設やCaféを視察・体験しました。10名ずつ2グループに分かれた大使館員モニターは、『禅ZEN Hostel』と『Hostel AIBIYA』という2つのコンセプトの違うホステルを交互に視察しました。ZEN Hostelのコンセプトは「和と洋の融合」で、和の空間であるにもかかわらず畳の部屋以外は靴のまま入ることができ、1階のバーは海外からの旅行者と地元の日本人が交流できるスペースを意識しています。一方Hostel AIBIYAは「旅から離れる宿」をコンセプトに、1階は全て宿泊者の共有スペースとしてキッチンも自由に利用できます。旅の疲れを取るために寝心地の良さを優先した寝室は、畳の部屋にもオーナーこだわりのローベッドが配されています。

 

 ホステル視察の後は、江戸時代に旅人達をお茶と軽食で癒した「茶店」をイメージした『CHAMISE Café』で休憩。地元でとれたフルーツのフレッシュジュースでのどを潤しました。

 

 

 

 

 

 一休みした後は、山ノ内町自慢の観光スポットで、参加者の1人も 「死ぬ前に1度行くべき観光スポットの1つと言われているから楽しみ!」と興奮気味に話していた『地獄谷野猿公苑じごくだにやえんこうえん』へ。駐車場から木陰が暑さを遮る山道を20分ほど歩いて野猿公苑に到着。スノーモンキーと呼ばれる雪深い冬に温泉に入るニホンザルも、夏場はさすがに露天風呂には見向きもしない様子でしたが、たくさんの子ザルたちがじゃれ合ったり、親ザルが毛づくろいをしてあげたりする姿を間近に見て、大使館員モニターたちは夢中で写真を撮っていました。

 

 野猿公苑から湯田中温泉に戻ると、一行は3つの温泉旅館に分かれてチェックインしました。外国人対応が進んでおり海外からのスキーヤーにも人気の『美湯の宿』、創業200年以上の老舗旅館で登録文化財である桃山風呂が有名な『よろづや』、WAKUWAKUやまのうちが関わり歴史ある小旅館を改装して2017年2月にオープンした『加命迺湯かめいのゆ』の3館は、それぞれ特徴がある旅館です。大使館員モニターは夕食までの2時間ほどの間に、交替でそれぞれの宿の貸切風呂で汗を流したり、浴衣で涼みながら地元のクラフトビールを堪能するなど温泉旅館ならではのリラックスした時間を過ごしました。

 夕食を兼ねた交流会は美湯の宿に全参加者が集まり、四季折々の山ノ内町の楽しみ方を動画で見た後に、翌日訪問する須坂市の三木正夫市長、長野県県民文化部の大月良則国際担当部長、山ノ内町の山本良一町会議員などが歓迎の挨拶をしました。そして和やかな雰囲気の中、食事をとりながら交流を深めました。

 

 

 

 2日目の朝は、山ノ内町が夏場の観光の目玉として力を入れている雲海を見に『竜王マウンテンパーク』へ。ロープウェイ麓駅から乗車し、案内係の説明を聞きながらゴンドラからの景色を楽しんでいると、途中から雲が多くなり、気が付くとロープウェイはすっかり雲の中に。山頂駅へ到着すると、隣接する展望デッキ『SORAテラス』から期待通りの雲海が眼下に広がっていました。大使館員モニターは大喜びで、幻想的な雲海の眺望に感嘆の声を挙げていました。そしてタップリ記念撮影をし終えると、今度はカフェで飲物を買って寛いだり、周辺を歩いて可憐に咲く高山植物を眺めてまわったりと、思い思いの時間を楽しみました。

 

 雲海が消えるまで山頂で過ごしてから、一行はSORAテラスを後にしてロープウェイで麓に下り、バスで須坂市へ向かいました。

 須坂市では最初に豪商の館『田中本家博物館』を訪問しました。かつて殿様よりも裕福であったと言われる田中本家は、素晴らしい邸宅と日本庭園が多くの蔵で囲われたまさに豪商の館で、蔵を改装して田中家代々のお宝を展示しています。田中家13代目の田中新十郎館長にご案内いただき、田中家の歴史とそれにまつわる器や家具、着物などを見学しました。屋外に出て庭園を散策していると、須坂市観光協会が準備したサプライズとして、「流しそうめん」が一行を待ち構えていました。大使館員モニターたちは、初めて経験する流しそうめんで暑さを忘れるとともに、自分が箸で捉えたそうめんを「美味しい!」と言って夢中で食べていました。ランチは窓から池が見える館内のレストランで、ベジタリアンでも食べることができる和定食を頂きました。

 

 昼食の後訪れた『須坂クラシック美術館』では、地元高校英語部の生徒が浴衣姿で一行を出迎え、思わず大使館員の間から拍手が沸き起こりました。歴史ある日本家屋の美術館では、2つのグループに分かれて、高校生の英語による説明で匂い袋づくりと打掛を羽織っての写真撮影を交互に行いました。参加者は2種類の体験を楽しむとともに、学生との交流をとても喜んでいました。

 その後は三木市長や浴衣姿の高校生と一緒に、古い木造建築や蔵が残る須坂の町を散策し、『笠鉾かさほこ会館』で祭の際に町を巡航する屋台や笠鉾と呼ばれる唐傘に飾りつけをした市の有形民俗文化財を見学。解説の英語通訳は高校生が立派に務めました。

 

 

 

 

 また最後に訪問した江戸中期創業の『塩屋醸造』では、昔ながらの製法で作る味噌と醤油の製造蔵を見学し、味噌が入った樽が100年使っているものと聞いて大変驚いていました。見学の最後に味噌汁の試飲も体験しまし、外交官の1人は「今まで食べた味噌汁の中で一番美味しかった」と嬉しそうに話していました。

 

 

 

 

 大使館員モニターは帰路の新幹線の中で、32項目にも及ぶ全筆記式のアンケートに真剣に取り組み、多くの貴重な感想と提案を書き込んでくれました。
 特に良かった観光地や施設として、多くのモニターが「訪問した場所全て!」という回答をしており、ツアー全般についても「ほぼ完璧に近い」など高い評価をいただきました。自分のお気に入りとして指摘されている個々の観光地、施設を集計してみると、竜王マウンテンパークのロープウェイと雲海、および地獄谷野猿公苑がほぼ同数でダントツの人気でした。
 また訪問地や交流会で出会った人々の温かさを指摘する参加者も多く、ジョギングの途中に町の人が手を振って「こんにちは!」と声を掛けてくれたと、その時の感動を書いている人もいました。観光地や観光施設の魅力は大事ですが、「歓迎」してくれている、という地元の人の温かさが伝わることも大切なことが伺われます。
 四季折々の地域の魅力についてプレゼンを受けて、ほぼ全員のモニターがウィンターシーズンをはじめ、他の季節に必ず再訪するとアンケートでも口頭でも宣言していました。